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「――でも、場合によっては、味方にも被害があるんじゃないのかな?」
「だから、そうならないために、最終調整を行っているんですわ! 運用方法さえ決定すれば、効果範囲をコントロールすることは可能なんです!」
シャーロットは語気を強めた。ゼノビアへの憎しみと、それから研究者としてのプライドと、それらが複雑に入り交じった主張のような気がした。
自分の予想以上に声が大きくなったのか、シャーロットは気まずそうに視線を逸らした。実際、周囲にちらほらといる別の研究者からの視線を感じる。
その禁断の力が行使されてしまうかどうかは、この先の戦況によるだろう。
ハンスの意見としては、やはりできることならば、神徒レジーナが戦いを終わらせてくれることがもっとも理想的である。強すぎる力というのは、逆にアルディスですら陥落させる可能性を秘めている。
「――ところでハンスさんも、そろそろ出撃命令が出るのでは?」
話題を転換するように、シャーロットはいった。
そうだな、そろそろ別の話をしよう――。
「ああ、出てるよ、二日後に。そのアルデウトシティだ」
最終決戦に赴く。そのために臨時に設立された拠点へと移動する。総力戦の様相だ。
「本来なら今も、こうしてる場合じゃないんだけどな」
「――あら? それはすみません、別に用事でもありましたか?」
引き止めたことを詫びるような言葉を聞いて、ようやく解釈の齟齬に気づいた。
「ああ、ごめんごめん。そうじゃなくて、気持ちの問題のことだよ。いてもたっても――ってこと」
休養も作戦のうちとはいえ、戦場に出ていないのがもどかしく感じられるくらいだ。この二日がとてつもなく長い。
納得したように、シャーロットは相槌した。
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