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「究極魔法が正式に実用化されれば、わたくしも戦場にも赴くつもりですわ。できるならば、『ラグナロク』の威力をこの目で直接観測したいと思っていましたし」
「戦争に? ――大丈夫なのか?」
「もちろん。究極魔法の完成と実用化は、いわばわたくしにとっての、研究者としての最終目標のようなものですからね。それが達成された暁には、少しくらいの我が儘は許されると思いますわ」
「ああ……それは、そうだよな」
というよりも、ハンスが尋ねたかったのは、魔研の許しどうこうではなくて、シャーロット自身のことだった。
家柄のこともそうだが、何より戦場では死が伴う。しっかり者に思える彼女のことだから、その認識が欠如していることはありえないだろう。覚悟のうえでの願望なのだ。
「怖くはないのか? 魔研には戦争を経験したやつなんていないんだろ」
「怖くないとは、はっきりとはいえません……。けれど――もう心はとうの昔に決まっていますよ。あのゼノビアに、家族を奪われたときに、わたくしの歩むべき人生は決まったといってもいいです。だから恐怖くらいで、その道を曲げようとは思いません」
つまり復讐、仇討ちということか――。
この手の話は、これまでもシャーロットからたびたび聞いている。たとえどんな障害に見舞われようとも、簡単に覆るような弱い信念ではないのだろう。
「カートライト家に反対されても、か? 純血でない養子とはいえ、貴族の娘だろ」
しかしシャーロットは、決意の表情を崩さなかった。
「家には当然、わたくしの考えは伝えてあります。今のところは、理解も得られてますから。けれどもし、今後対立するようなことになれば、そのときはカートライトの家を出てでも、目的は果たさなければなりません……」
「そこまでなのか……」
本当に本気で、シャーロットは復讐に人生を捧げるつもりなのかもしれない。
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