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「初見ではおそらく見とれてしまいますよ? 気品のある大人の女性です。しかも知識も体力も武術も魔法も、すべてにおいて秀でている存在です」
そうらしい。あのときは遠すぎて、顔を確認することはできなかった。
「もっとも――」
そこでにわかに、シャーロットの目の輝きが変わった気がした。
あれ、まさか、この感じは――。
「わたくしとしては! 魔卿ジェルド様とハンス様の絡みにもたいへん興味がありますが! なんせ、ジェルド様はダンディーなおじさまですからね!」
あっ、やっぱり――。
ハンスは背筋に寒気が走るのを感じざるを得なかった。
切り替わりが瞬時すぎて、予防線を張ることができないのだ。
「三十代のおじさまと十代の青年の組み合わせも、なかなか……。もちろん、ジェルド様が攻めでしょうが……う、うへ……へへ……。ふひひひひ……。じゅるり」
まずい、この状況は早めに解除しなければ。
「えっ、ええっと……。そういう……人外の能力っていうのか? ――ってのはやっぱ、化神として手に入れた力ってことなのかな!? そもそも化神ってなんなんだろ? 女神と魔王の魂を宿した人間――ってことくらいしか知らないんだよな!」
ハンスの矢継ぎ早の質問に、さすがにシャーロットは我に返ったようだ。
よだれを垂らしそうな口元をまずは引き締めて、それから目つき、最後に頬の緩みが解消され、だんだんと表情は真面目なものに戻った。
シャーロットは考えるように視線を宙に向けた。
「――詳しいことは、わたくしもよくは知りませんが――けれど化神となるには、アルディスに認められた正式な儀式が必要だとか、聞いたことはありますが――。そもそも、化神の力というのは、代々受け継がれていくものらしいですわよ。前任から後任へと伝えられていくんですわ」
「へえ……。じゃあ、真実を知るのは、その本人たちだけか……」
「まあ、簡単にいうなら、そうなりますわね」
端的にシャーロットが答えたことで、一つの話題が終了した。
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