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「ああ、ソフィか。少し前になるけど、会ったよ。そのときは中央エリアの拠点の医療チームとして、忙しそうに働いてたよ」
そのとき、ソフィとぶつかったときに見た、彼女の薄紫と白の縞々が脳裏に浮かんだが、まさか口にはできない。
ただ、その拠点は、今ではもう解体されている。後継として簡易的に作られている拠点も、日に日に首都方向へと後退を続けているのだ。
「知ってるかもしれないけど、今はアルデウトシティの後方にある拠点に控えてる」
だがおそらく近々、ソフィはアルディストンにまで引き上げることになるのではないだろうか。
それくらい、ゼノビアの侵攻は進んでいるのだ。彼女の命の安全を最優先するなら、そういう決断が下される時期にある。
何せもう、わざわざベースキャンプという中継地点を作るメリットはほとんどない状況にまで陥っている。どのみち、アルデウトシティでの対戦がすべてを決めるだろう。
「情報はちらほら聞いてますわ。でもとにかく、無事なら何よりですわ。あの子だけがわたくしの心配の種なんです」
ほっと一息をつく。
「はは。まるで母親みたいだな。それかお姉さんか」
年齢は同じ十六歳なのだが、外見的にも精神的にも、シャーロットのほうが大人びて見える。いや、ソフィが幼く見えるのだろうか。
「そうですわね。姉のようなものかもしれません」
シャーロットは、小悪魔的に笑った。
そして、コーヒーを一口啜る。それを見てハンスも倣った。すでにだいぶ冷めている。
ふと、どちらのシャーロットが本当の姿なのだろうかと、不思議に思った。
魔研の研究者として、ゼノビアへの憎しみを抱く彼女と、今のように笑いながら友人を語る彼女と。
後者であることを祈りたいが、きっと研究者という職業も、そう単純なものではないのだろう。
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