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「戦争が終われば、二人ももっと女の子らしい生活ができるんだろうけどな。――シャーロットは、魔法の研究以外にやりたいこととかないの?」
「――やりたいこと、ですか?」
不意を突かれたような反応だった。
「そうそう。仮にこのまま戦争が終わったらさ、もう今までのように熱心に研究することもなくなるんだろうし……」
希望的な話だが、ゼノビアを制圧し友好条約を締結することができれば、軍事力を縮小することもありえるのだ。
シャーロットは困ったような顔をした。
「なかなか、想像もつきませんわね……。アルディストンに来てからずっと、この研究所にいるものですから」
その気持ちは、少しハンスもわかる気がした。ハンスの場合は、闘いであり、剣であり、ブレイバーがそれにあたるのだ。
ロディを追われ、グラノフの街にたどり着き、そこで師と出会ってからというもの、ハンスの人生の大半は剣の修行に費やされてきた。もしも、この剣を振るう場を取り上げられたとしたら、たしかに途方に暮れてしまうのかもしれない。
そう考えると、少し酷な質問をしたのかもしれない――。
では逆に自分がどうなのだと問われたら、自由な時間を何に使うのかと問われたら、答えに窮するのだ。
「たとえば、なんだろうな――。おしゃれとか、趣味とか、うーん、恋とか――?」
「こっ、恋!?」
シャーロットは目を丸くした。
我ながら、勢いのあまり失言をしてしまったのかもしれないと後悔した。たぶん、そういう発言をする印象を持たれていなかったのだろう。
シャーロットからはこれまで、あまり恋愛話に食いつくような雰囲気を感じたことはなかった。
ソフィとキャッキャしている姿は何度か見たが、それはどちらかといえば、二人のそういう空気感を楽しんでいるように思えていたのだ。
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