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いや別に、自分がそういう雰囲気に対して敏感というわけではないのだが――。
彼女との関わりは普段は少ないので、ハンスが気づいていないだけなのかもしれない。
ただ本当に欠片ほども、そういう雰囲気や態度を見たことがないのだ。というか、男性といる場面自体、目撃したことがない。
「恋だなんて、わたくしは……」
にわかに、シャーロットは頬をほんのりと赤く染めた。その頬を両の掌で隠すようにして、しおらしくゆらゆらと首を振った。
おや、と思った。
案外、そうでもないのかもしれない。
「わたくしはただ、見ているだけでいいんです……」
今度は、目尻を下げて、うっとりとする。
ということは、まさか気になる相手が――?
いったい誰だ?
貴族なのか?
「ミーア御姉様のことを! それだけで幸せなんです!」
「ああ、なるほど、ミーアね――って、ミーアっ!? 女の子どうしなの!?」
たしかにミーアなら年下の憧れになりそうだな、などと危うく納得しかけたが、そもそもその前提が間違っていた。
先輩後輩の話ではなくて、今は恋愛の話だったのだ。
「お、女の子どうしでは――やはり、だっ、ダメでしょうか?」
まるで許可を求めるような、切実な視線を向けられた。
それは、愛の告白をするときの女の子の表情にさえ見えたが、念のため再確認しておくと、そもそも相手は同性である。
たしかに――以前、任務でいっしょになったときにも、シャーロットはミーアに対して並々ならぬ敬意を払っていたような気がする。
あれはただ単に彼女を敬愛していただけではなく、そういう意味も込められていたのか――。
いや、どこまで本気なのか、まだわからないが。
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