一章 未完の新兵器

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 いや別に、自分がそういう雰囲気に対して敏感というわけではないのだが――。  彼女との関わりは普段は少ないので、ハンスが気づいていないだけなのかもしれない。  ただ本当に欠片ほども、そういう雰囲気や態度を見たことがないのだ。というか、男性といる場面自体、目撃したことがない。 「恋だなんて、わたくしは……」  にわかに、シャーロットは頬をほんのりと赤く染めた。その頬を両の掌で隠すようにして、しおらしくゆらゆらと首を振った。  おや、と思った。  案外、そうでもないのかもしれない。 「わたくしはただ、見ているだけでいいんです……」  今度は、目尻を下げて、うっとりとする。  ということは、まさか気になる相手が――?  いったい誰だ?  貴族なのか? 「ミーア御姉様のことを! それだけで幸せなんです!」 「ああ、なるほど、ミーアね――って、ミーアっ!? 女の子どうしなの!?」  たしかにミーアなら年下の憧れになりそうだな、などと危うく納得しかけたが、そもそもその前提が間違っていた。  先輩後輩の話ではなくて、今は恋愛の話だったのだ。 「お、女の子どうしでは――やはり、だっ、ダメでしょうか?」  まるで許可を求めるような、切実な視線を向けられた。  それは、愛の告白をするときの女の子の表情にさえ見えたが、念のため再確認しておくと、そもそも相手は同性である。  たしかに――以前、任務でいっしょになったときにも、シャーロットはミーアに対して並々ならぬ敬意を払っていたような気がする。  あれはただ単に彼女を敬愛していただけではなく、そういう意味も込められていたのか――。  いや、どこまで本気なのか、まだわからないが。
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