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「いやちょっと、驚いただけだ。――別に、うーん、ダメなんてことは……ないんじゃないかな? 俺にはよくわからないけど」
結局、最後はお茶を濁してしまった。
ハンスの立場で同性といわれると、ルカやジュリオの姿が真っ先に頭に浮かぶが――とても彼らとの間に、友人や仲間という以外の感情が芽生えそうにない。
つまり、そういうことである。
同性どうしというのは、やはり特殊なのだ。
「ですわよね? そうですわよね!? わたくしにもきっと、チャンスがあるはずです!」
すごい勢い前のめりになってくる。ハンスは思わず身を引いた。
とにかく熱量だけはひしひしと感じた。本当にどこまで本気なのか。
ふと、思った。そんなシャーロットなら、ミーアのこと――つまりミーアの恋愛事情について、何か詳しく知っているのではないか、と。
「――ということは、ミーアには今、特に意中の相手はいないわけだ」
意中の相手、といったところで、シャーロットは露骨にどぎまぎとした。
普段の凛とした研究者の像しか見たことがないハンスには物珍しい光景だった。その意中の相手に自分を重ねているのかもしれない。
「わ、わたくしの知るかぎりでは。御姉様が特定の方とお付き合いをされているという話は聞きません。それ以上は、わかりません……。心の中には、すでに誰かがいるのかもしれませんけど……」
シャーロットは熱量を落として、自信なさそうに話した。
心の中には、か――。
その心の中を知ることが、この上なく困難なわけだ。
「まあ、俺も聞いたことないから。はっきりいって、まだ謎が多いな、ミーアには」
きっとそういう相手がいたにしても、自分には教えてくれないだろうという、そういう確信がハンスにはある。一線を引かれたまま、それを乗り越えることは許されない。
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