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ゼーファスとの対立――ミーアの言葉を借りるなら、哲学のすれ違いが発生したのも、そのときなのだ。
たしかミーアは――その戦線において、ゼーファスを守って殉職した仲間がいたと、そんな話をしていた。
同じ小隊を組んでいたというその誰かは、当時は活発で勢いまかせだったゼーファスの暴走が原因で、命を落としたというのだ。
その人物が、おそらく鍵を握っている。
そう、あの墓地の一つに眠る、とある人物が――。
「休業の理由はわたくしは知りませんわ。あえて訊いたりもしません。御姉様が決めたことなのですから、何か深い事情があったんですわ」
物分かりよく、シャーロットは頷く。それもミーアを崇拝するゆえにだろう。
「だろうな。理由もなく一年も休んでたら、そもそも戻ってこられないだろうし。――うん、俺も無理に訊きはしない。もしも今後縁があるなら、必然的に聞くことになるんだろうさ」
我ながら少し臭い台詞だっただろうか。
けれど大袈裟でもカッコつけでもなく、人間関係というのは、たぶんそういうものだ。
必要に迫られたとき、不思議と必然的にそれはやってくる。
まさに『ノアの意志』に導かれるかのように。
「縁、ですか。そういう意味ではハンスさんは――ミーア御姉様と何かと関わりが深いですよね……。むむむ……これは、ライバル登場かもしれないですわね……!」
「ら、ライバル? なのか? 俺が?」
どういう種類のライバルなのだろう?
「そうですよ! 小隊を組んだり、一緒に行動することが多いでしょう? 先日の敵地潜入の任務のときだって!」
シャーロットは瞳を爛々と輝かせていた。
「潜入任務? そんなことまで知っているのか!?」
でもまさか、ミーアを治療するときに、彼女の裸を見たり、胸に触れてしまったりしたことまでは、彼女は知らないだろう。
というか、知らないでいて欲しい。切実な願望だった。
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