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「ハンスさんは、もう信頼されているんですよ! 御姉様に! 冗談などではなく、特別扱いされてます! もう、羨ましいです憎らしいです腹立たしいです! ――不幸になればいいのに、です!」
「おい最後」
小さな声で他人の不幸を願うな。
そして、いざ明確にいわれると、そんな気もしてくるのだった。
ミーアが他に、誰かと親しげにしている姿や、自分の過去を打ち明けているような印象はない。もちろん、ハンスの知らないミーアの時間は大量にあるわけで、自分の物差しがすべてではないのだが。
実はかなり贔屓にされていたといえるかもしれない。
初対面のときですら、ミーアは見ず知らずの編入生に話しかけてくれた。
それにも、理由はあったのだ――。
それをあの墓地の夜に聞いた――。
当時はミーアという人間を知らなかったので何も思わなかったが、彼女はそもそも、積極的に他人に関わっていくタイプではない。
あのこと自体が、特殊な状況だったのだ。
自分のとある部分が、ミーアの心をくすぐったのだ――。
「だって、不公平ですよ! ハンスさんにはそもそも、お似合いのお相手がいるじゃないですか……」
シャーロットはそういって、僅かに頬を染める。悩ましげな目をして、もじもじとする。
「え? と……?」
それはまさか、ユキのことをいっているのか?
ハンスの知る限りでいうなら、シャーロットとユキは、バンデンタウンの任務で少し顔を合わせたくらいで、ほとんど赤の他人のような関係のはずだ。
あのとき、ユキと親しげにしていた場面を見られていたのかもしれない。それならまだ納得がいく。
「それってもしかして……あの……」
「そうです! わかってるでしょう!」
やはり、バレていたか。
さすがにハンスも観念した。
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