一章 未完の新兵器

41/42
前へ
/310ページ
次へ
「ほら……あの……ルカさんです……」  そうだよな――。 「はは、やっぱりか。そう、ルカ――て、ん? ルカ――?」  ルカって誰だっけ――という思考が頭を駆け巡って、危うく真っ白になりかけた。  そしてようやく、その名前に対応する姿が映像として頭に浮かんできた。  ルカ――。 「ルカっ!?」  同じブレイバーナイトの同僚で。  そして、男だ――。 「そうです! ハンスさんは! ルカさんと一緒にいること! けっこう多くないですか!?」  唐突に、シャーロットの声が迫力を増した。鼻からも勢いよく空気が漏れ出しているようだった。  訊かれているというより、勝手に息巻いている感じだ。 「ルカは――同性だッ!」  当たり前のことを、あえて強調していってやった。でなければ、シャーロットは勘違いを続ける気がする。  いや、はたして本当に勘違いで正しいのだろうか?  ハンスにそんな気がないとわかっていながら、無理やりそこに押し込もうとするような、どす黒いエネルギーを感じる。  まあ、世の中にはいろいろな人がいるわけだが――しかし想像しただけでも、悪寒が走る。  なんなのだろう?  自分自身は、同性のミーアに好意を持っていて、ハンスには同性のルカをけしかけている。  シャーロットは、同性どうしに結びつけたがるという、特殊な感性――というかはっきりいえば性癖――の持ち主なのだろうか。 「そうです。男性ですよ? だからいいんじゃないですか!」  シャーロットは今日一番、瞳をキラキラと輝かせて、さらには鼻息までもが荒くなっていた。  もはや、年頃の女の子であり、貴族であることも忘れてしまっているかのようだった。  こっちもそう思わないほうがいいかもしれない。これまで積み上げられてきたシャーロットのイメージは、すでに崩壊していた。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加