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「ほら……あの……ルカさんです……」
そうだよな――。
「はは、やっぱりか。そう、ルカ――て、ん? ルカ――?」
ルカって誰だっけ――という思考が頭を駆け巡って、危うく真っ白になりかけた。
そしてようやく、その名前に対応する姿が映像として頭に浮かんできた。
ルカ――。
「ルカっ!?」
同じブレイバーナイトの同僚で。
そして、男だ――。
「そうです! ハンスさんは! ルカさんと一緒にいること! けっこう多くないですか!?」
唐突に、シャーロットの声が迫力を増した。鼻からも勢いよく空気が漏れ出しているようだった。
訊かれているというより、勝手に息巻いている感じだ。
「ルカは――同性だッ!」
当たり前のことを、あえて強調していってやった。でなければ、シャーロットは勘違いを続ける気がする。
いや、はたして本当に勘違いで正しいのだろうか?
ハンスにそんな気がないとわかっていながら、無理やりそこに押し込もうとするような、どす黒いエネルギーを感じる。
まあ、世の中にはいろいろな人がいるわけだが――しかし想像しただけでも、悪寒が走る。
なんなのだろう?
自分自身は、同性のミーアに好意を持っていて、ハンスには同性のルカをけしかけている。
シャーロットは、同性どうしに結びつけたがるという、特殊な感性――というかはっきりいえば性癖――の持ち主なのだろうか。
「そうです。男性ですよ? だからいいんじゃないですか!」
シャーロットは今日一番、瞳をキラキラと輝かせて、さらには鼻息までもが荒くなっていた。
もはや、年頃の女の子であり、貴族であることも忘れてしまっているかのようだった。
こっちもそう思わないほうがいいかもしれない。これまで積み上げられてきたシャーロットのイメージは、すでに崩壊していた。
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