二章 決戦に臨む者たち

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 詰まるところ、彼らの侵攻を許してしまった時点で、情勢は一方的になり始めている。  ブレイバーパラディンの統率力も、徐々にだがその力を失いつつあった。  ぼんやりとだが、そういう負の空気を、ユキは肌で感じ始めている。敗戦がだんだんと色濃くなっていく中で、兵士ひとりひとりのメンタルにも微妙な変化が生まれているのだろう。  さすがに逃げ出す者は現れていないが、個人個人の士気の減少は、そのまま組織力の低下に直結するといってもいい。個々が好き勝手に戦って勝てるほど、戦争は甘くはないと思う。  とにかく情況は悪い。もはや軌道修正ができないほどに。  少なくとも、それはユキ一人の手には負えない問題だった。一介の兵士にできることではない。それほどの統率力のある人間なら、とっくにパラディンのトップに立っているだろう。  現状その立場にいるのは、ユキのチームメイトでもあるベルトラムだが、彼の力をもってしても、はたしてどうだろうか。  即答はできないし、鶴の一声で結束するような想像は浮かんでこない。そういうレベルに到達しつつある。  そういった情勢を、国も察知したのだろう。  ここへきてついに、神徒レジーナの参戦が決定された。それは国家が行った正式なアナウンスであり、その一報は当然ながら対戦国であるゼノビアにも伝えられた。  ユキがあの日、クラッドストン学園の本館で、彼女から聞いた通りの展開だった。神徒レジーナに与えられた任務は、迫り来る三機の自走兵器を破壊することなのだ。  対してゼノビアは、現状では、彼らの化神を戦地に送り出すつもりはないらしい。あくまでも今の機械兵器の力で、神なる力をも退けようという構えのようだ。
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