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しかしそれにはやはり、信頼のおけるパートナーか、もしくは優秀な部下が欲しいところだ。
何事も自分一人の力だけでは成り立たない。自らに近い思想を持ち、そして積極的に動いてくれる戦力は必要だった。
だが、すぐに思いつく人物は、現状いない――。
普段からそういう活動を続けていればいいのかもしれないが、あいにく人心掌握というのはユキの苦手分野だった。
そもそも下の人間を使うという行為自体の経験が薄く、また個人的にも不得意なのだ。
やはり茨の道は続きそうだった。
ユキは給水器を操作して、使い捨てのコップに飲料水を注いだ。徐々にコップが満たされていく様をぼんやりと見つめていた、ちょうどその途中でのことだった。
この水呑場のテントの入り口のほうで、何やら土を踏み鳴らすような音が聞こえたのだ。
すでに夜はそれなりに遅い。
こんな時間に誰かやってきたのだろうか?
やってくる相手によっては少し面倒だ。軍人という職業柄、我の強い人間も多く、案外対立し合う個人は多い。ユキは敵を作らないように心がけているが、それでも相性の悪い相手というのはいる。
特にブレイバーパラディン以外の階級の相手なら、なおさらだ。対応が難しい。悪しき暗黙のルールは、戦場でも変わらず適用されているのだった。
テントをくぐって、誰かがやってきた気配がした。入り口のほうで影がゆらりと動くのが見えた。
そしてすぐに、灰色の軍服が現れた。ブレイバーナイトの軍服だった。
「――おっ」
「あ……」
お互いに、はっとした顔をしていたと思う。
そこに現れたのは、ブレイバーナイト、現在の『シロガネ』クラスの首席である、ミーアだった。
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