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どうもこのミーアを相手にすると、自分のペースで物事を進めることができなくなるのだ。
苦手意識があるわけでもないのに。
不思議だった。これが相性というやつなのだろうか。
「だいぶ、苦戦してるよね」
ユキの隣の給水器を操作しながら、ミーアはいった。飲料水が注がれたコップを口に運んでから、彼女は続ける。
「あたしの見立てだと、このままじゃ二週間持たないね」
戦況の話だ。
「そうだね。二週間も、厳しいかもしれない……」
首都アルディストンはもうすぐそこに迫っている。ゼノビア軍が本気で侵攻すれば、下手をすれば一日で到達できるかもしれない。
「もう、諦めた?」
軽い口調で、ミーアは聞いてきた。仮にそうなれば、笑いごとでは済まされない事態に陥るとわかっているはずなのに。
「冗談はやめてください! 私は最後の一人になるまで、アルディスの勝利を諦めません」
ユキはいった。疑いようのない本音だった。ブレイバーパラディンとしての本音だ。
十七歳の女の子、ユキではなく――。
プロとして。軍人として。そう考えているのだ。
「はは、わかってるわかってる。――そうだろうね。ま、あたしも似たようなモンかな? あたしが負けを認めるまでは、戦いに負けはない」
最後の言葉を口にしたときのミーアは、ことさらにゆっくりと、丁寧な口調だった。
淡々とその言葉を紡いだ。それが余計に彼女の信念を感じさせた。周囲の環境に流されない強さを感じたのだ。
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