二章 決戦に臨む者たち

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「軍が負けを認めても――?」  ユキが尋ねると、ミーアは迷いのない顔で、こちらを見た。 「あたしは自分のために戦ってるから。もちろん、その結果としてアルディスには勝ってもらいたいけど。――ていっても、軍が白旗挙げたあとに戦ってたら、それは私闘になっちゃうか」  ははは、とミーアは笑う。  なんとも掴みどころのない娘だ。そして達観している。  彼女と歳が同じだということが、たまに信じられなくなるときもある。 「ねえ、ミーア……。率直に聞かせて。この戦い、負けると思う? ミーア自身が思うような勝ち負けじゃなくて、客観的な国どうしの戦いとして――」  茶化されたりごまかされたりしないように、あえて回りくどいいいかたをした。それくらい、彼女の本音を欲していた。  ユキの真剣さを汲んだのか、ミーアは笑っていたはずの表情を引き締めた。 「このまま有効な手を打たないなら、九十九パーセント負けるだろうね。でも、アルディス軍はちゃんと動いたじゃん?」 「うん……。神徒レジーナが参戦されます」 「神徒さまか。ヘタすりゃあたしたちも巻添えだな」  どんくらいの力があるのか知らないけどさ、と、ミーアは付け加えた。それはユキにとっても未知数だ。 「ええ。だからレジーナ様が交戦を始めたら、私たちは撤退になるでしょうね」 『究極魔法』を使うというなら、なおさらだ。 「ふうん……。なんかそれはそれで、モヤモヤするな」 「レジーナ様の前では、私たちはたぶん、邪魔だから」  とはいえユキも、彼女の戦う様を直接見たことはない。過去の逸話と資料に目を通したことがあるくらいだ。しかも戦争に介入するというのは、今回が初めてのことなのだ。  そこで生まれるエネルギーは、まさに未知数といって差し支えないのかもしれない。
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