12人が本棚に入れています
本棚に追加
ユキはそこで、はっと我に返った。
思わずレジーナに釘付けになっていたことに気づいた。
瞳が特別に目立っていたのはもちろんだが、そもそもが見蕩れるような美女なのだ。端正な顔立ちに、艶やかな美しさを持つ金髪もそうだ。
当然、前髪が外に跳ねてなんかいない――。
直しても直らないような癖っ毛なんて、ない。そんな恥ずかしい欠点、あるはずもない。
そもそもが、自分とは大違いなのだった。
年齢はいくつなんだろう?
少なくとも見た目では二十代前半から中盤くらいに見えるが、実際はたぶん、もっと上なのだろうと思う。
レジーナが神徒に就任したのは、たしか九年程前だったはずだ。
就任したときの年齢はわからないが、逆算すると、おそらくは三十前後だろう。
「うふ……そんなにじっと見つめて、私の顔になにかついてる?」
レジーナはくすくすと笑った。
そんな無精はないとわかっていて、会話の糸口のためにそういってくれたのだろう。
「まさかそんな……ちょっと……見蕩れてしまったというか……。レジーナ様はとてもお綺麗なので」
正直に話すと、少し恥ずかしい気持ちになった。
「――あら、そうかしら? 私はもうとっくにおばさんだけど、あなたはまだ十代でしょう? 若いというのは、それだけで一つの長所なのよ」
そういって、意地悪そうな表情になる。けれど、そこには悪意のようなものも、意地汚さのようなものも感じられない。神徒という迫力に怯えているユキの緊張を緩和させようとしているのかもしれない。
「私にはもったいないお言葉です。――でも、なんで、こんなところにレジーナ様が?」
たしかに、化神の二人の住居は、このクラッドストン学園本館の中にあるはずだった。
けれどそこは、ここより上のフロアであり、一般の人間はまず訪れることのない禁足地なのだ。
聞いた話によると、外出するための通路も、彼女らのためだけの別ルートが設けられているとか。
それは逆にいうと、彼女ら化神が、ブレイバーの集う場所に姿を表すことがまずないことを意味する。化神とはその存在自体が高貴なものであり、普通はその姿を目にすることすら叶わないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!