二章 決戦に臨む者たち

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「ま、わかってるけどね。――理解してるし、納得してるし、割りきってる。誰だって負けることとか、ましてや死ぬことなんてのは怖いだろうからね。――でも、幼馴染ちゃんは――幼馴染ちゃんの目は、まだ生きてるように見えるよ」  ミーアの視線を感じる。 「当たり前です。私は諦めません。それに、まだ死ねない……。私は絶対に、戦場では死ねないから」 「ふふん、そうだよねえ。帰りを待つ王子様がいるわけだし」 「えっ、そんな……王子さまなんて……」  いいかけて、躊躇する。ここで清い反応をしてしまっては、彼女の思う壺なのだ。  二人が王子様として思い描いている人物は、確実に共通している。すべてはわかった上での発言だろう。  そういえば――ハンスもそろそろ、この戦場に派遣される予定になっていたはずだ――。  久しぶりに顔を合わせることがあるかもしれない。むしろこんな切羽詰まった状態でしか、まともに会えないのは寂しいものだ。  そんな我が儘がいえる場合ではないけれど――。  できることなら、ハンスを自分の隊に置いておきたい、というのがユキの本音だ。そうすれば、いつでも会えるし、すぐに助けることができる。そう思っていた。  けれど――。  けれどそれは、危険な側面を秘めているということを、先日のデオグラストでの任務でまざまざと見せつけられた。  傍にいるということはつまり、二人にとって都合の悪い出来事までも見えてしまうということ。それで心を動かされてしまうということ。  会いたい気持ちと、それとは逆に、離れていたい気持ちとが、ユキの中では現在進行形で揺れ動いている。 「ああ、たしかに幼馴染くんは、王子様って柄じゃないか」  ユキが、ちゃん、なら、ハンスは、くん、になるらしい。
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