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王子様というのは、たしかに品がありすぎるが、かといって柄でないといわれると、それはそれで少し不満を覚える。
他の全員が否定したとしても、ユキにとっては、ハンスは王子様のようなものなのだ。まったく忙しい心だった。
彼の階級にかけるわけではないけれど、ハンスはユキのナイト、という表現が近いように思う。
ロディにいた頃はそうだった。ハンスはユキを気にかけてくれ、守ってくれる存在――ナイトだったのだ。
「それよりは、街人ってカンジ? 待ち人とかけてる洒落とかじゃないよ? 叩き上げの一般人みたいな。悪い王に囚われた姫を助け出す一般人。――で、どう?」
ミーアはからかうように笑みをこぼしていた。
「どうって……」
そういわれても、どう反応すればいいんだろう?
その後ミーアは不意に、真面目な口調に変わった。
「あたしは勝手に思うんだけど、せっかくイイ相手がいるんたから、もっと素直に甘えちゃえばいいのに。階級とか軍とか、そんなこと考えてるのもったいないよ」
まさかミーアにそんな助言をされるとは夢にも思わなかった。だが、これはからかっている訳ではないらしい。真剣に忠告をしているように聞こえる。
「そう思っても、そんなことできないから……」
迷惑をかけてしまうだけだ。
あまりに求めすぎては。
お互いに今は難しい局面にあるのに、自分だけが甘えている場合ではない。二人ともダメになってしまうかもしれない。
「ふうん……。そんなモンか。あたしからしたら、キミらほどの両想いなんて見たことないけどな。無理やり切っても切り離せない感じ」
「そ、そんなことは……。彼には、別に好きな人がいるかもしれないし……」
何より人間の心というのは、移り変わるものだ。
このミーアや、そして貴族のソフィ・アインスフェルト嬢も、ハンスとはよく行動をともにしている。
他にも親しい女の子はいるだろう。その彼女らに心が靡く可能性を、ユキには否定などしようもない。
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