二章 決戦に臨む者たち

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 王子様というのは、たしかに品がありすぎるが、かといって柄でないといわれると、それはそれで少し不満を覚える。  他の全員が否定したとしても、ユキにとっては、ハンスは王子様のようなものなのだ。まったく忙しい心だった。  彼の階級にかけるわけではないけれど、ハンスはユキのナイト、という表現が近いように思う。  ロディにいた頃はそうだった。ハンスはユキを気にかけてくれ、守ってくれる存在――ナイトだったのだ。 「それよりは、街人ってカンジ? 待ち人とかけてる洒落とかじゃないよ? 叩き上げの一般人みたいな。悪い王に囚われた姫を助け出す一般人。――で、どう?」  ミーアはからかうように笑みをこぼしていた。 「どうって……」  そういわれても、どう反応すればいいんだろう?  その後ミーアは不意に、真面目な口調に変わった。 「あたしは勝手に思うんだけど、せっかくイイ相手がいるんたから、もっと素直に甘えちゃえばいいのに。階級とか軍とか、そんなこと考えてるのもったいないよ」  まさかミーアにそんな助言をされるとは夢にも思わなかった。だが、これはからかっている訳ではないらしい。真剣に忠告をしているように聞こえる。 「そう思っても、そんなことできないから……」  迷惑をかけてしまうだけだ。  あまりに求めすぎては。  お互いに今は難しい局面にあるのに、自分だけが甘えている場合ではない。二人ともダメになってしまうかもしれない。 「ふうん……。そんなモンか。あたしからしたら、キミらほどの両想いなんて見たことないけどな。無理やり切っても切り離せない感じ」 「そ、そんなことは……。彼には、別に好きな人がいるかもしれないし……」  何より人間の心というのは、移り変わるものだ。  このミーアや、そして貴族のソフィ・アインスフェルト嬢も、ハンスとはよく行動をともにしている。  他にも親しい女の子はいるだろう。その彼女らに心が(なび)く可能性を、ユキには否定などしようもない。
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