二章 決戦に臨む者たち

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「は? 別の好きなひと?」  呆れたような、もっといえば馬鹿にしたような、そんな声だ。 「――そんなの、あの男にあるわけないじゃん。キミ以外の女の子なんて、全部同じにしか見えてないようなヤツなんだから」  そうだろうか?  逆にどの女の子とも、親しげにしているように見えるのだけど。 「それこそ、ありえません。人の気持ちなんて、他人にはわからないし……」  思わず悲観的な言葉が漏れた。  それを聞いて何かを感じたのか、ミーアは鼻を鳴らすようにして笑う。 「難儀な性格だねぇ、幼馴染ちゃんは。素直に受け止めればいいだけなのに。彼の好き好きアピールを感じてないの?」  まだまだ、ぐいぐいと踏み込んでくる。  このまま付き合っていたら、どんどんと恥ずかしい目に合いそうだ。 「もうっ、彼の話はいいです! ――それより、さっきの続きを話してもいい? ――あなたこそ、まだこの戦いを諦めてはいないんだよね?」  今は恋愛よりも戦争だ。  ユキの言葉を聞きながら、ミーアはまだ物足りないようすだった。  仕切り直すように、水を口に運ぶ。そして小さく吐息をついた。ひと呼吸おいてから彼女はいった。 「諦めてる、っていう感覚はあたしの中にはないかな? そういう決めつけはなくて、なるようになると思ってる。勝ったらそのときに、ああ勝ったんだって思うだろうし、負けたら負けたで、負けたかあって……そんなカンジ」  なんとも回りくどい表現をする。ただニュアンスは伝わってきた。  それをユキなりに解釈すると、結果が決まるまで、彼女は変わらず戦い続けるという意味合いだろう。  結果は後からついてくるのであり、それに向かってやるだけなのだ。未来にとらわれず、この一瞬に全力を尽くすということなのだ。  素直にユキは、そんなミーアに好感を持てた。  それは普段の苦手意識とはまったく別の次元のものであって、戦場においての彼女は、共闘したいと思わせる相手だった。
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