二章 決戦に臨む者たち

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 シェイラは飛び抜けすぎている。  越えすぎている。  人間と兵士の間にある境界を。  越えすぎて、兵士になりすぎているのだ。 「シェイラさんは、ね……。ミーアのいいたいことはわかるよ。あのひとはほんとに、特別だから。ちょっと普通じゃないくらいに、ブレイバーとして割りきってる」 「みたいだね……。ああいうのが、本当に特別な人間なのかもしれないな。あたしなんか、中途半端だ。合理主義者のようでも、そこまで非情になりきれてない」  少し意外な告白だった。ミーアが自分を卑下するような発言をするとは。  多少なりとも、心を開いてくれている証拠だろうか。  だからこそ、共感できる。ミーアをフォローしたいという気持ちになれる。 「非情になることだけが兵士として優秀なわけじゃないよ。私たちはあくまでも、動かされて、戦場で働く側の人間……。非情であることが求められるのは、現場のリーダーじゃなく、兵士を駒のように使わないといけないアルディス軍本部の人間だと思う。だから私たち兵士どうしは、非情さよりもチームワークのほうが大事にしたいなって……」  一気にいってから、少し押しつけがましさを感じて、ユキは補足した。 「――これはあくまでも私の考えだけどね。……間違ってるかな?」  恐る恐る、ミーアの顔を見る。そこに浮かぶ彼女の表情に、不快感は見当たらない。 「間違ってなんかないよ。――キミは、優しいんだね」  その、優しい、というたった一言の中に、どれ程の深い意味が込められているのかは、瞬時には読み解けなかった。 「その胸に、優しさが詰まってるのかなあ?」  ミーアはからかうようにいった。そしてユキのとある部分を、指で差す。  その示す先がわかって、ユキは顔が熱くなった。
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