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ユキ自身も、こうして直接対面するのは初めてだった。彼女の姿を見たのも、思い出せば開戦直前の、壮行会以来のことだった。
ユキの質問は、レジーナにとっては意外な内容だったらしい。不思議そうに目を丸くしてから、目の前に重ねられた会議資料の一つを手に取った。
「そういえば、あなたのお名前は?」
唐突にレジーナは質問する。
このタイミングで訊かれると思っていなかったので、少し反応が遅れた。
「――ユキ、です。ブレイバーパラディン、ランク『S3』、クラスは『ショウリュウ』です」
「ユキさん、ね? へえ、優秀なのですね。『リュウ』の『S3』だなんて」
「そんな……何度もいいますが、私なんてまだまだですから」
神徒レジーナを目の前にして、現状に満足しているような姿など、絶対に見せられない。そんな恥ずかしいこと、できるはずもない。
いずれは彼女に追いつくくらいの気概を持っていなければ、この戦火を生き残ることすらできないのだ。
ユキはそう思っている。
「じゃあ、改めて、ユキさん――さっきの質問は、私には愚問ですよ」
少し強い口調で、レジーナはいった。
何か気に障るようなことをしてしまったのだろうかと、ユキは焦った。彼女のいう、さっきの質問、が何なのか、それすら忘れてしまうくらいに、心中は取り乱していた。
ただ、レジーナはすぐに、表情を崩した。
「まだまだ至らない私だけれど、これでもアルディス軍の兵力の一つなのよ? 次に行われる作戦についての興味はあります。ほかの誰よりも、ね」
彼女は朗らかに微笑する。
いわれるまでもなく、当たり前のことだった。
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