12人が本棚に入れています
本棚に追加
「別にそんな……興味ないです。男性を異性として見ることなんて……」
あえて避けているといってもいい。特にブレイバーであるときは、性別の違いは、努めて忘れようとしてさえいる。
「彼さえいれば、十分だもんね」
どきりと、心臓が高鳴った。何がいいたいのかはわかる。
「それは……」
俯くしかない。
できることなら、ハンスのことすら、この戦争中は忘れてしまいたいくらいなのだ。でないと、不安で胸が張り裂けそうになる。
いつどこで、最期の時がやってくるのかもわからないのだから――。
「ほら、やっぱり。女の子の顔になった。そのいじらしさは天性のモンだな」
愉快そうに笑ってから、ミーアは飲み物を口に運ぶ。
騙されたような気分だ。いや、からかわれているのか。
「やめてください。――私にもいわせてもらうなら、ミーアのほうが全然、女の子として魅力的だと思うよ。私は絶対、あなたのようにはなれないから……」
ハンスもきっと、彼女が放つ魅力に気づいているのだ。だからこそ、二人は近い距離にいる。
ナイトの仲間どうしというのもあるけれど、それ以上に、お互いに関心を持っているのだろうと思う。
もし、ハンスが彼女に惹かれているなら――。
いや、そんなことは、考えたくもなかった。
「はは、冗談はよしてよ。これのどこが女の子なのさ? あたしみたいになんて、なれたとしてもならないほうがいいよ」
ミーアは珍しく自虐的だった。かつ、自分自身への不満さえ、僅かに感じられる。
女の子らしい色恋沙汰を話題にしたと思いきや、自分は女の子らしくないという。やはりまだ掴みどころがない印象だ。
最初のコメントを投稿しよう!