二章 決戦に臨む者たち

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「終わらせたいの……。私は、この戦いを……」  するとミーアは、ふっと吐息を漏らした。 「ならもう、これ以上は、あたしなんかが口出しできることじゃないな……」 「――ミーア?」 「あたしなんかが踏み込んじゃいけないってこと。哲学、思想、主義、信念――そういうのって、絶対に他人に侵されちゃいけないものなんだよ。たとえその結果、その相手と対立することになっても、絶対にそれだけは守らないといけないし、譲っちゃいけない。――あたしはそう思う」  そういう彼女の言葉が、むしろ一番、信念に満ちていると思った。  彼女には彼女なりの、確固たる何かが胸の中にどっかりと鎮座していて、そしてミーアという強靭な人格を作り上げている。  そんな気がする――。 「やっぱりキミは立派だよ。立派な女の子だね。――実は、あたしはさ」  ミーアがこちらを向く。  そこにはまた、初めての表情が浮かんでいた。照れたような、恥ずかしさのような、そんな顔だったのだ。 「キミみたいな女の子になりたかったんだ。――奥ゆかしくて、品行方正で、ちょっと気弱で、相手を立てることができて、女性的な魅力があって……男の子に守ってもらえるような、そんな感じの女の子に」  まるで現実のものとは思えない告白だった。  目の前のミーアが――下の階級でありながら、尊敬すらできる、ブレイバーの鏡ともいえるミーアが――。  そんな普通の女の子でありたいなんて――。 「驚いたけど……でも全然、今からでもなれるんじゃないかな?」  戦争は人を変える。  ブレイバーという立場が、今のミーアを作り上げているとしたら、変わるチャンスはまだあるはずだ。 
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