二章 決戦に臨む者たち

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※※※  顕暦八七四年、仲秋の月、二十二日――。  開戦から四十二日目。 「お名前は何といわれるのですか?」  そんなふうに問いかけてきた彼女は、まさに神とよべるほどの、気品に溢れた姿だった。 「あ、えっとあの……ハンスです。ブレイバーナイトです」  一目見て、思わず息を呑んだが、何とか冷静さを保ちつつ、ハンスは丁寧さを心がけながら答えた。  背中まで伸びた、透き通るような綺麗な金髪が、ハンスを目を引いた。それだけで、彼女の地位を表しているかのようだった。  軍服という表現がすでに正しいのかもわからない、神々しいドレス調の衣服に彼女は身を包んでいる。  白地を基調としているところも、荘厳さを演出するのに役立っているのだろう。とにかく、戦場に赴く格好にしてはいささか小綺麗すぎるのだった。  いや、デザイン的にそうなっているというだけだろう。実際のところは、戦闘に適した処理が至るところに施されているに違いなかった。  さらにその軍服の生地はきっと、このアルディスで生産できる最高品質のそれが使用されているのだと思われる。  なぜならば、目の前の彼女は、アルディスによって選ばれた、神の分身ともいえる存在なのだから。  神の魂を宿す者、化神。  女神アイリスの魂を二分した化神――。  神徒レジーナ。  そんな彼女が目の前にいる。そして、一対一の会話をしている。普通ではありえない状況だろう。  言葉を交わすことさえ、おこがましいくらいだ。  自分など、実績はほぼ皆無である。実力的にも、ブレイバー全体から見れば、そこまで秀でたものもないだろう。一介のブレイバーでしかないのだ。  軍服の色を見て、彼女もそれがわかっているはずだが――。  
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