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その通りだ――。
レジーナが至らないなんて、もはや謙遜の言葉にすらならない。冗談をいっているようにしか聞こえない。
彼女は神徒なのである。唯一無二の存在なのだ。アルディスが誇る、最後の手段。最後の、取って置きの戦力。
だから、彼女が戦況に関心を持つなんてのは、当たり前のことだったのだ。
首都防衛戦は、アルディスの未来を占う大決戦だ。彼女ほどの存在でなくとも、国民の誰もが漏れなく関心を持っている。
「すみませんでしたっ。――その、失礼なことをいってしまって」
ユキは勢いよく頭を下げた。そんな当然の行動で許されるのかはわからなかったが、とにかくそうするしかなかった。
化神とは、あまりにも浮世離れした存在なので、世論には疎いのかと、勝手に想像してしまっていた。
「ふふ、大丈夫よ。怒ってるわけではないから。――ほら、もう頭を上げて」
彼女がそういい終わってから、たっぷり三秒程待って、ユキは身体を戻した。
レジーナはユキのほうではなく、資料に目を落としていた。単なるポーズではなく、二枚目以降もじっくりと食い入るように見ている。その事細かな内容までをよくよく確認するように。
「なるほどね……。交戦地はアルデウトシティに決まりましたか……。あそこは良い街でしたが、やむを得ませんね」
心苦しそうにいう。
彼女はわかっているのだ。そこが戦地となれば、街は元の姿を保つことができなくなると。
大都市一つを潰す覚悟で、首都アルディストンを守る選択を、アルディス軍は下したのだ。
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