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「そんなに怖いお顔をされなくても良いですよ?」
さらに表情を緩ませ、にこりとレジーナは笑う。
目元が細く円弧を描く、穏やかな微笑みだった。
それは強大なる能力を持つ軍人というよりは、まるで慈愛に満ちた母親であるかのような、すべてを包み込むような優しさを感じさせた。
「いえ、すみません。少し戸惑っているだけで……」
すると、どうか緊張をほぐしてください――とレジーナはいう。
そんなことは、許しを得たにしても不可能なわけだが。
「少し森林浴をしていたんですよ。普段はあまり、外に出ることがありませんから……。たまに外出するときくらいは、こうして自然に触れたいものなのです。面倒なことを全部忘れて、ね?」
レジーナは説明するように、また少しばかり言い訳をするような口調で、そういった。
これだけを聞くと、彼女が化神という聖なる存在であることを忘れてしまいそうだった。
化神というより、街の上品なお姉さんという印象。もしも軍服がワンピースか何かだったら、誰も彼女が神徒レジーナだとはわからないかもしれない。
「けれど、それだけではありませんよ?」
おどけるように、彼女は右手の人差し指を立てて、ウインクをした。なんというか、図ったような仕草だった。
「興味深い力に引き寄せられて、私はここまでやってきました」
その発言はまさに、ハンスの予感が的中したものだった。つまりレジーナは、ハンスの何かを察知してここにやってきたのだ。
「力……ですか?」
そういわれたものの、思い当たるほどの力は、ハンスにはない。
そもそもここはブレイバーの実力者たちが集うベースキャンプだ。力を持つ人間はごろごろいる。
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