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他に誰も持っていないということは、それだけで世間的には特異な存在と認識される。
確実なことだった。アルディス軍にとって、新たなる技術や武器を生むための、格好の研究材料であるといっても過言ではないだろう。
そういった良い方向の評価ならまだいいが、特殊な力は、それだけで異端とされる可能性もある。
たとえばあの、魔術のように――。
国の意思によって、公の場から葬られた、魔術のように――。
この能力が禁術の類いとして扱われたなら、いったいどうなるのだろう。自分はどうなってしまうのだろうか。
その不安に対する答えを握っている者がいるとするなら、それは他ならぬ目の前の彼女だけだった。
「なぜ――そんなことが……わかるんでしょうか? あなたの――レジーナ様の持つ、化神としての力なんでしょうか?」
最大限にぼやかした回答だった。
こんなことを訊いたからといって、何かあるわけではないのだが。
「うふふ、驚きましたか?」
レジーナは静かに首を傾ける。まるでイタズラをした後の子どものようだった。
イタズラ気分で秘密を暴かれてしまってはたまらない。この能力は墓まで持っていくつもりだったのだ。
「驚いたのもそうですが……それを知って、レジーナ様がどうしようと考えられているのか、正直、そっちのほうがとても気になります……」
背中にはじっとりと冷や汗が浮かんでいることに気がついた。心臓の音が聞こえてくる。
アルディス軍に公開されることだけは避けたいのだ。
「ふふふ、気を静めてください。――どうにもしませんよ。私は。変わった力があると、わかってしまっただけですから」
それもまた、おどけたような調子だった。
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