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「私がその力のことを、他の誰かに公言することはありません。それはお約束します」
レジーナはそう前置きをする。一応の安心はできたが、やはり力について語るつもりはないらしい。
「その力を恐れることなく、大切にされると良いですよ。いずれ力はあなたを助けます。――そして公の場においては、無闇やたらに使わないことです」
にわかに、穏やかだったはずのレジーナが、語気を強めた。
「無闇に……?」
「そうです。その力は決して、ここアルディスで公言されてよいものではありませんし、ましてや社会的に認知されることも、現時点では許されません。そういう類いの力なのです。あなただけが知る、あなただけに許される、あなただけの力であるべきなのです。――しかしながら、いずれは同じ力を持つ人間と、あなたが相対するときがくるかもしれません。もしその日が来るなら、そのときは真実を知ることになるでしょうね――」
「真実?」
力についてはいいとして、真実とはどういうことだ?
やはりこの能力には、何か秘密があるのか。
「――やっぱり、あなたはこの力について、何か知っているんですね? だったら教えてください。この力が何なのか、それだけでも……。なぜ俺にだけこの力があるのか――」
少し熱くなってしまった。相手が神徒様であることも忘れて。
いや、わかっていながら、好奇心を抑えることができなかったのだ。
この謎を解き明かせる人物に出会うことは、今後一切ないような、そんな予感がしたからだった。ここで聞き出しておかなければ、永遠にこの謎が解かれることはないような、そんな焦燥感に襲われていた。
自分の身体に宿った得たいの知れない能力のことを、不気味に思ったことは何度もある。いつかはこの能力に、身体を蹂躙されてしまうのではないかという、不安を感じた日もあった。
知りたいのだ。
誰も持ち合わせていない、この難題の解答を。
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