二章 決戦に臨む者たち

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※※※ 「よお、ハンス。ちょっといいか?」  神徒レジーナが去ったあと、ぼんやりとその場に立ち尽くしていたハンスに、呼びかける声があった。  我に返ったような感覚だった。  声の主を探ると、それは見覚えのある青髪を持つ青年だった。青色の前髪の中に、黒のメッシュが入っている。 「……ルカか」  いったいどのくらい、物思いに耽っていたのだろう。  レジーナの姿はもうどこにも見えない。目を閉じていたとはいえ、忽然と消えたように思えたのは、彼女の能力が成す技だったのだろうか。 「ルカ、神徒レジーナ様に会わなかったか?」  ハンスは訊いてみた。あれは幻だったのではないかとすら、思えてきたからだ。 「レジーナ様? いや、会ってないけど……というより、出撃前の彼女がこんなところにいるのか?」 「あ、いや、そうだよな。何でもないんだ……」 「ん? なんだ、幻覚でも見たのか」  ルカは冗談っぽく笑った。  本当にそうなのではと疑っているのだから、苦笑いをするしかない。  けれどちゃんと会話をしたことまでは覚えている。あれは幻覚などではないはずだ。  だとすると、本当に呼ばれるようにして、ここへやって来たのだろうか。ハンスの持つ力に引き寄せられて。  今は――忘れてしまおう。 「そんなんじゃないよ。――で、ルカのほうこそ、なんか用事だったんじゃないのか」  思えばルカとは、この戦争で初めて同じ部隊に配属されることになった。  総力戦の様相を呈していて、これが最終決戦とすら目されているこのアルデウトシティでの戦いには、ミーアはもちろんのこと、ジュリオもフォルクもドゥドゥもセラフィナも、そしてイーヴァインのエヴァ=リナも、皆が揃って出撃することに決まっている。
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