二章 決戦に臨む者たち

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 アルデウトシティの周辺には、すでに多数のブレイバーが待機している状態だ。  ルカやハンスの役割は、やはり歩兵部隊の討伐だった。  この最終決戦における最大の目標は、三機同時に侵攻してくる自走兵器の完全破壊だ。  その責務を、神徒レジーナを中心とした魔法部隊が務めるため、それ以外の大多数の兵士は、脇を固めるであろうゼノビア兵を撃退するべく、バックアップに回ることとなる。 「ああ、そうだったな」  仕切り直すように、ルカはそういった。 「こんな、明日どうなるかわからないような佳境のときだからこそ、ハンスにちょっも訊いてみたいことがあってな」  仰々しくそう前置きをしてから続ける。 「ハンスは、『ノアの意志』について、どう考えてる?」  ルカはそういった。何の脈絡もなく。 「――なんだよ、唐突に……」 「唐突だからこそいいんじゃないか。咄嗟のときにこそ、人間の本質というのは現れるものなんだぜ? 素直な感情のままにな」  ニヤリと笑う。  自信に満ちた表情。  ミーアに負けず劣らず、ルカもいつもこんな調子だ。そして彼が小難しいことをいうと、とてもそれっぽく聞こえるのは不思議だ。なぜなのだろう。  それにしても――本当に唐突でいきなりで不意打ちだ。 『ノアの意志』か――。 「……どうっていわれてもな。アルディスにはそういう絶対的な教えがあるってことくらいの印象しかないけど。あとは伝承どおりのことが過去にあったんだろうな、とか」  そもそもあまり深く考えたこともない。これといって関連書物を漁ったことも、これまではない。  今後もアルディスを生きる身としては、ノアの歴史を知識として学ぶことは必要だとは思うが。  特に首都アルディストンでは、『ノアの意志』の伝承や、アイリスとリエスの二人の神に対する信仰心はとても強い。街に点在する教会の多さがそれを物語っている。
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