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「そうだ。まあ、要はその伝承だよ」
待っていたというように、ルカは声を弾ませた。
「伝承の内容はある程度知ってるんだろ?」
「ざっくりとは――」
伝承の細かな内容についてはぼんやりしているが、それを教わったことは、まだまだ強く記憶の表面に張り付いている。
ユキと訪れたお祭りの夜に、彼女がその口で説明してくれたのだ。
「大いなる存在と、女神アイリス、魔王リエス、それからマナと神器――重要なのはこんなもんだろ? ノアはその昔、この大地を安定を求めて大いなる存在を生んだ。その大いなる存在は、世界の統治のために、今度は女神アイリスと魔王リエスを生んだ。やがて、アイリスとリエスはマナを作り出したけど、人間がマナの力に溺れ始めたがために、マナを神噐に封印した。――ざっとこんな感じだっけ?」
「ん」
ルカは頷いた。
「なんだ、けっこう知ってるじゃん」
「受け売りだけど……」
ユキの話の受け売りだ。
「そもそも元をたどれば、結局のところ、この世界の全部が、『ノアの意志』に依存するって話なんだけどな。今ハンスがいったように、大いなる存在を作り出したのはノアで、その大いなる存在がアイリスとリエスを生み出した。――ということは、間接的にはアイリスとリエスも、ノアによって作られたと捉えることができる。それは伝承でいうところの『ノアの意志』によるもの、ってわけだ。だからアイリスとリエスがマナを生み出したのも、間接的には『ノアの意志』の結果ともいえる」
ややこしい話ではあるが、ほとんどその通りだ。そう考えると、『ノアの意志』はすべての始まりであり、またすべての黒幕ともいえる。
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