死にたいけど、死にたくない。死にたくないけど、死にたい。

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「よく食べるね」  思わず発してしまった言葉。トモミが顔を上げる。嫌味に聞こえてしまっただろうか。私はごまかすためにうどんの器に箸を入れて、ぐるぐるとかき回した。ちぎれた麺が引っかかったので、仕方なく口に運ぶ。 「まあね」  トモミが笑顔で言う。 「彼も『美味しそうに食べるね』って言ってくれるんだ」  実際に言われた時のことを思い出したのか、本当に嬉しそうに笑う彼女。それに似せた表情を作るため、顔の筋肉を動かす。反比例するように、私の心はどんどん温度を失っていく。 ――何で「これ」に彼氏がいて、私にはいないの? ――こんなひねくれた私を好きになってくれる人なんて、いるわけないじゃん。 ――死にたい。 ――はいはい、死にたくないですごめんなさい、間違えました。私は生きたいです。殺さないでください。  今日何度目か分からない思考を脳内で繰り返しながら、私はトモミの食事を眺めていた。 「今週の土曜日で三ヶ月なんだ」  そぼろ丼の最後の一口をラーメンのスープで飲み込んだトモミが言う。たっぷり五秒ほど経ってからやっと、「彼氏と付き合い始めてから三ヶ月」なのだと気がついた。 「そうなんだ。おめでとう」  感情が上手く乗せられなかった。トモミは気に留めなかったようで、満点の笑顔で言ってのける。 「ありがとう。ウチ、すごく幸せ」 ――何それ。彼氏がいない私のことを馬鹿にしてるわけ?「ウチは幸せ、あなたは不幸」ってこと? ――そんなことトモミは言ってないじゃない。考えすぎ。ただのろけてるだけだよ。どれだけ自分を不幸にしたいわけ? ――不幸な自分に安心する私なんて、誰も好きになってくれるはずないよね。むしろ彼氏ができたら、それはそれでキモい。 ――自分からも他人からも愛されない私なんて、生きてる価値がない。死ねばいいのに。殺してください。 ――今のなしでお願いします、はい。私は生きたいです。不幸でも、自分が嫌いでも、情緒不安定でも、それでも、生きていたいです。
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