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少女A十六歳。父親から虐待を受け、今は母方の祖父母の家で暮らしている。
「噛むとね、全部忘れられるの。あれを『飛ぶ』っていうのかな? 頭の中が真っ白になって、痛いとか悲しいとか不安とか、全部なくなるの。噛む力が強ければ強いほど、気持ち良くなるの。だから、強く長く噛んじゃうんだ」
なぜか嬉しそうな口調で語る彼女。しかしその瞳に光はない。
「自傷しちゃダメだよって言われても、うっせえよって感じ。私の苦しみなんて、誰もわかんないくせに」
彼女が俯いた。その表情は嬉しそうにも悲しそうにも見える。
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