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少女Aのもう一枚の写真(背後から撮られたもの)が現れたとき、トモミがスマートフォンを横から取り上げた。
「これ、見ちゃったから。ヒカリもそうだったらどうしようって思って」
トモミの目に涙が溜まっていく。
「ウチの家に来て。どんな話でも聞くよ」
ぽろぽろと泣き出すトモミ。私はそれを黙って眺めていた。気持ちが冷え切っていて、心が動かない。
「ヒカリが死んじゃったら、ウチ、嫌だよ。だから、お願い。話して。家に来て」
行くのは面倒だけど、断るのはもっと面倒だ。
「分かった」
「ほんと!」
トモミが両手で顔をぬぐう。お腹で手を拭くと、私の右手に左手を絡ませてきた。
「え?」
掠れた声が出る。
「ヒカリが消えちゃいそうだったから。ウチんちまでちゃんと連れて行けるように」
涙で濡れた顔で、トモミが笑った。
手を引かれ、教室を出る。廊下を行き交う学生に見られるのが嫌で、私は右手を震わせた。トモミが私を見る。
「ちゃんと自分で行けるから、離して」
「分かった」
トモミは素直に左手を離してくれた。その後は二人とも無言で歩いて、トモミのアパートに向かった。
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