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「ピアノというか、基本的になんでも好きだよ!そのなかでも特にお気に入りなのはね!ピアノのシの音でしょー、氷と氷がぶつかる音も好きでしょー、電話で聴くもしもしって言葉でしょー、色は青系が好きでー、うめぼしの後に飲むお水でしょー、デイリーヤマザキで買える胡麻饅頭でしょー、夏に履くビーチサンダルで親指とひとさし指がちょっと痛くなることでしょー、公園のブランコに、女の子がヒールの靴履いたときに足の甲に浮く血管でしょー、病院の看護師さんのお姉さんっぽい話し方とかカレンダーに丸付けするのも好きー。あとはこうやって好きなもの数えるために指折るのとか、たれぱんだのぬいぐるみとか、アニメと漫画も好きだし…あ、特にバトル系とスポーツ系はね、けっこうチェックしてるんだよー。あとは映画館と水族館と美術館みたいにナントカ館ってつく場所と背もたれがない椅子と猫ちゃんと犬くんと大きい動物と…あ、動物園も好き!それから色は青が好きで…これ言ったか。クラスの美津ちゃんのトレードマークの星型のぱっちんどめも可愛いし、海は世界で一番好きな場所でしょーお豆腐でできたハンバーグも好きで…ねえ直矢くんはデミグラスソース好き?わたしはデミグラスソースが一番好きなんだけど好き?」 やばい、すげー多く返ってきた。好きって言いながらこいつ途中で指折り数えるのやめてたし。自分であきてどうすんだよ。 げっそりしてる俺に気づいていながら身体を揺さぶってくる。「ねえねえ」「デミグラスソース好き?」って。 うざすぎて無理。そう思って引っぺがしたのに彼女は好きなものを紹介できたことが満足なのかにこにこ笑ってる。 「デミグラスソースが好きかもそうなんだけどね、直矢くんの好きなもの、知りたいなあ」 しつこい。うざい。めんどくさい。ダルい。うざい。おせっかい。八方美人。自分のことはだいたい正しいと思っていそうな態度。強引で、土足で踏み込んでくる。すげー嫌い。 …だけど、そうやって裏も表もない笑顔をされると、たまらなくなる。 どーでもいいや。そんな感じ。 こいつが近くにいると、そういう気持ちになれた。 「……藤宮守寿」 「はい、なんでしょう」 「質問の答え、藤宮守寿」 解れよ。 視線を合わせた瞬間、普段余裕しかない彼女の顔が真っ赤に染まった。 俺は赤が好きかも。なんて、バカみたいなことを思った。 ・ ・ ・
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