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プロローグ
「自分で動いてみろよ」
「む、無茶、言わないでくださいよ」
御影さんのカチカチのモノが、下から僕を何度も突き上げる。先端がゴリゴリと擦れるたびに、背筋に甘い痺れが走って思うように力が入らない。
昼間のことだった。
番組プロデューサーの星野さんがカンペを持って立っていた僕のお尻をポンと叩いた。いつもの冗談だ。親が子供にするようなスキンシップ。
たったそれだけなのに、御影さん的にはとんでもないコトだったらしい。
仕事が終わったのは夜の九時だった。
御影さんは下町の一軒家に住んでいる。両親は他界。おばあちゃんと二人暮らしをしていたらしいけど、そのおばあちゃんも亡くなり今は悠々自適の一人暮らし。一軒家というだけあって、僕のアパートとは大違い。初めてお邪魔した時は奥へ続く長い廊下と部屋数の多さに、ココで一人暮らし? と驚くほど広く感じた。
御籠島での恐怖体験から僕は御影さんといわゆる、お付き合いする羽目になってしまった。羽目になったなんて変な言い方かもしれない。今でもちょっと現実味がない感じがする。なぜって、職場での御影さんは相変わらず横暴で、意地悪だし、厳しい。だからもしかして、付き合ってると思ってるのは僕だけで、御影さんは性欲を満たす相手くらいにしか思ってないかも……?
遠い昔、田舎を出る時に友達に言われた言葉がある。
『東京は気をつけなきゃにゃあ。いろんな人がいるきに。とくにテレビ局らぁて怖かよ。薬やっちゅうたり、男ん好きらぁだってうじゃうじゃおるんやか? みっちゃん細うてこんまいき一発でカマ掘られちゃうで』
ずばり、まんまと掘られてしまったわけで……。
でも、御影さんは男好きとか、ゲイというわけじゃない。 御影さんはドSの高圧意地悪大魔神。切れ長で冷たい印象の目つきは性格の悪さが滲み出てる。だけどイケメンだし、高身長だし、わりとマッチョ。だから、口も悪くて意地悪だけど、モテモテだし、女の人とバンバン営んでいたらしいし。
僕が良かれと思いボディービルダーの雑誌を渡したらド叱られたことがある。男好きとか、男もOKとかじゃなく、こんな風に言うのはちょっとアレだけど……僕だからみたい。
だから、別に騙されてるわけでも、悪いことをしてるわけでもないんだけど。やっぱり両親には言えない。言ったら、いごっそう(頑固者)の父さんには勘当されそうだし、母さんは泣いちゃうだろう。姉ちゃんは……嬉々として面白がるだろう姿が容易に想像できてどっと疲れてしまった。
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