恐怖レポート

2/16
前へ
/25ページ
次へ
 幽霊ってなんで女の人が多いんだろう。もっと陽気なおじさんが出たっていいんじゃないかな? と、いつも思う。  全員に配り終えた僕は御影さんの隣の席へ戻った。 「はぁ……」  周りには悟られない程度のため息が漏れる。御影さんが資料を読み言った。 「このアパートはまだあるんですか?」 「あるわよ。その騒動は二十八年前で、さすがに建物は新しくなっているけど、同じ場所に建ってるの」 「ふ~ん。じゃあ大家さんの話は聞けるってことか……」  御影さんが興味を示す。嫌な予感。  御影さんが僕を見て、軽い口調で言った。 「ちょっと行ってくるか」  ホラ来た!  僕は正面を向いたまま、眼鏡の内側でゆっくり視線を御影さんの方に向ける。御影さんは体中からワクワクを放っている。小学生みたいだ。僕が嫌がるの知ってるくせに。向かい側に座る僕の一年先輩の近藤さんが「行きましょう」と身を乗り出して御影さんに反応した。 「お、じゃあ、近藤は音声。深月はカメラな」  二人で行ってきてください。と言いたいけど、みんなの前でやり合うわけにもいかない。僕はしぶしぶ「はい」と返事をした。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

360人が本棚に入れています
本棚に追加