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幽霊ってなんで女の人が多いんだろう。もっと陽気なおじさんが出たっていいんじゃないかな? と、いつも思う。
全員に配り終えた僕は御影さんの隣の席へ戻った。
「はぁ……」
周りには悟られない程度のため息が漏れる。御影さんが資料を読み言った。
「このアパートはまだあるんですか?」
「あるわよ。その騒動は二十八年前で、さすがに建物は新しくなっているけど、同じ場所に建ってるの」
「ふ~ん。じゃあ大家さんの話は聞けるってことか……」
御影さんが興味を示す。嫌な予感。
御影さんが僕を見て、軽い口調で言った。
「ちょっと行ってくるか」
ホラ来た!
僕は正面を向いたまま、眼鏡の内側でゆっくり視線を御影さんの方に向ける。御影さんは体中からワクワクを放っている。小学生みたいだ。僕が嫌がるの知ってるくせに。向かい側に座る僕の一年先輩の近藤さんが「行きましょう」と身を乗り出して御影さんに反応した。
「お、じゃあ、近藤は音声。深月はカメラな」
二人で行ってきてください。と言いたいけど、みんなの前でやり合うわけにもいかない。僕はしぶしぶ「はい」と返事をした。
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