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学校は安心できない場所だけど、第2理科実験室は別だった。
「うははははは!あの渕上ルノアが、芸能界デビュー!?人生で1番の笑えん話やのぉ~!?うはははははは!」
「笑ってるじゃないですか?」
言ってることとやってることが違うと親友を指摘する。
それに五十嵐(ごじゅうあらし)ヤマトは、ゲラゲラ笑い続ける。
教壇の後ろに並んで腰を下ろし、2人でお弁当を食べていた。
「しっかし、テレビの世界に行くっちゅーことは、レディースやめるんやろか?」
「僕に聞かないでください、ヤマト。」
「うははは!それをきっかけにいじめをやめるか、凛が我慢をやめるかどっちかやな~!」
「・・・できれば、自分の手は汚したくないんですけどね。」
いじめられっ子な私ですが、実はもう1つの顔がある。
ここにいるヤマトを含めた同級生の男女数名で、【龍星軍】という暴走族をやっている。
元々は、大好きの人と一緒にいたくて参加したことだけど・・・
「うはははは!まさか、自分のいじめとる相手が、あの『龍星軍の総長・凛道蓮』やと思わんやろなー!」
「男装してるとも思わないでしょう。」
そう、男の振りをして総長をしてるんですよね、私。
〔★気づく方がすごい★〕
私が凛道蓮であることを知るヤマトは、こうやって毎日、一緒にお昼を食べてくれる。
ヤマトは何も言わないけど、多分、いじめられている私を心配しているみたい。
もちろん、誰にもバレないように内緒で、お昼休みだけ会っている。
その日、私が受けたいじめの愚痴を聞いてくれて励ましてくれる。
ヤマトはヤマトで、龍星軍の仲間達からの連絡事項をリアルタイムで教えてくれていた。
仲間からの連絡は私の携帯にもくるけど、『菅原凛』でいる時に『凛道蓮』の携帯の電源は落としている。
だから、菅原凛でいる時の『凛道蓮への緊急の連絡』は、ヤマトが知らせてくれるようになっていた。
「凛、凛!自分、夏休みの宿題は返してもらえたかのぉー?」
「ああ、あれですか・・・」
写させろと言って、クラスのいじめっ子達に、お金と共に強引に奪われた私の夏休みの宿題。
取られたのが先月のことで、泥棒に近い形で奪われたことを告げ口すれば、私の宿題を燃やすと脅された。
(心配しなくても、告げ口する相手さえいないのに。)
教師の大半が、渕上の味方で、私の方が渕上に嫌がらせをしている加害者だと思っているのに。
〔★悲しい現実だ★〕
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