339人が本棚に入れています
本棚に追加
「な・・・なんですか、あれ!?」
「え?『伽藍道(がらんどう)』の特攻知らないの?」
そう言ったのは、私の近くにいた若者。
「『伽藍道(がらんどう)』名物の根性ためしの特攻だぜ?」
「はあ!?なんですか、それ!?」
「あ、坊主、よそから来たんだろう?地元じゃみんな知ってるぜ?つかねぇーチキンな兵隊を、サツへの足止め代わりに使う『伽藍道(がらんどう)』の親衛隊の伝統行事。」
「どんな行事ですか!?死にますよ!?」
「死人は出てねぇよ。とりあえず、サツを巻くのに使ってる。サツはひかねぇように気をつけるから、毎回人間の命優先で逃がしちまう。足止めに使われた奴も、上手くやって自力で帰ってきたら、幹部に昇格できるらしいぜ。まぁ、気にくわない奴や生意気な奴とかも、不意打ちで使うらしいからさ。よくやるよなぁ~」
「な!?仲間にそんなことするんですか!?」
「仲間って、あははは!歴代の『伽藍道(がらんどう)』の総長は・・・特に今の頭は、捨てゴマ程度にしか思ってないぜ?変わりはいくらでもいるからな~」
「そんな・・・」
(ひどい・・・!)
「いてぇよぉ~!」
その声で、捨てゴマにされたヤンキーを見る。ギョッとした。
「子供!?」
「ああ、あれは中坊だろうな~てことは、根性ナシが落されたか。」
そう言うと、解説してくれた若者はどこかに行ってしまう。
私は私で、無性に怒りが収まらない。
(親衛隊は、しんがりを務めるのが役目だけど・・・!)
「人間で足止めって、どういうこと・・・!?」
(なによりも、落とされる方は『やめてくれ』と言っていた。それを無視して叩き落とすなんて!!)
「いてぇよぉ~いてぇよぉ~!」
「だったら、ジッとしてるんだぞ?」
「お前の仲間で、別のルートで落とされた奴は、足が折れてるのに逃げ回ってるんだからな・・・」
「おい、早く救急車呼んでやれ!」
「はい・・・!」
呆れるような憐れむようなヤンキーと警官達のやり取りが聞こえた。
(よそでもやってるの!?)
もはや、見過ごせなくなり、メットをかぶって単車のキーを回す。
バウウン!
さいわい、ギャラリーは、負傷した『伽藍道(がらんどう)』の親衛隊達に釘付けで私を見てない。
野次馬達を背に、バイクを急発進させた。
最初のコメントを投稿しよう!