遅刻ギリギリ

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遅刻ギリギリ

とてもいい天気の日だった。 太陽の光が幼いあたしに降り注ぎ、ポカポカと心地よい。 あたしの右側にはお父さん。 そして左側にはお母さんが歩いている。 2人とも、あたしの手をギュッと握りしめてくれて、3人で公園へ向けて歩いていた。 「今日はね、沢山滑り台で遊ぶの!」 最近のあたしのハマっている遊具は滑り台だった。 幼稚園でも、公園でも、必ず何度も階段を上り、思いっきりスピードを上げて滑り下りている。 滑り台の上かから見る景色はいつもと違っていて、うんと空が近くなる。 まるで手を伸ばせば届きそうだから、あたしは1人で滑り台の上に立って両手を高く伸ばすんだ。 もうすぐ届く。 もう少し大きくなれば届く。 なぜ自分がそんなに空を意識しているのかよくわからなかった。 でも、ひたすら手を伸ばす。 その空の先になにかがあるとでも言うように……。 歩いていると不意に回りの景色が影を帯びたような気がしてあたしの歩調は緩くなった。 それに合わせて両側を歩く両親の歩調も緩くなる。 あたしの視界の右側に坂道が見え始めていた。
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