似たもの同士

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 僕は彼女と付き合って半年が経った。彼女との出会いはインカレサークルで、お互いに似た部分があった事、僕が彼女を大好きになった事、告白したことから付き合いが始まった。しかし、彼女は家庭の事情で大学を中退し、実家のある神奈川に帰ってしまっていた。そんな彼女のことも幸せにしたくて、付き合いは続けることにした。  今日はそんな遠距離恋愛をしている彼女に大阪から遥々、神奈川に会いにきていたことだった。予定よりも早くに到着した僕は、横浜中華街に行った。彼女を誘いたかったが、その日は事情があるからダメだと断られていた。僕は、寂しくも一人食べ歩きをしていた。中華街を散策していると、彼女に似たチャイナ娘とすれ違った。チャイナ服に身を包み、目尻には濃い目の赤のアイシャドウが広がっていた。僕の彼女はあのようなメイクをしないから勘違いだろうと思い込んだ。  しかし、どうしても気になる僕は彼女についていくことにした。彼女は入り組んだ道を進み、ある背の高い男性と合流した。その男と合流した彼女ははとても笑顔で、女神と例える事ができるほど輝いていた。けれど、その笑顔はどことなく、僕の彼女とどこか似ている部分があった。笑うと無くなる目、目尻にできるシワ、ほっぺにできる笑窪全てが彼女のようだった。僕は何か少し恐ろしく感じて、彼女に電話をした。すると目の前で彼女が電話に出た。彼女は今ちょっと忙しいから、今は電話している場合じゃないという事だった。    僕の中でプツンと何かが切れた。  その日は早くに切り上げ、ホテルに向かった。着いて早々眠ろうと思ったが、眠る事ができなかった。僕はショックだった。僕と過ごす時間よりも楽しそうに別の男性と過ごす彼女の様子はとても綺麗で、攻めようがなかった彼女の幸せが、僕の幸せだった。しかし、今度の幸せを素直に喜ぶことはできなかった。  次の日、僕は彼女に別れを告げた 無言の僕と必死な彼女 「何でもないよ」と繰り返す僕と「何で?何で?」と繰り返す君 「気にしないで」という僕と「何があったの?」という君 僕は彼女に幸せになってほしい気持ちを貫き、何でもないを突き通した。 君は僕の幸せを祈ってくれてるのかな? 最後まで、浮気を認めなかったね 嘘つきの僕 と 嘘つきの君 最後まで似たもの同士だったね
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