最終章 終わりと始まり

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 弟のジュラルとは、家族として特別に一度話をする機会があった。  彼はどこか清々しい表情をしており、これまでのことを謝罪され、わたくしはそれを受け入れた。  中身が庶民の前世であるわたしと違い、生粋のお坊ちゃんであるジュラルには辛い日々になるだろう。だけど、どうか逃げずに生きてほしいと、強く願う。  今回の騒動は、王家の一大スキャンダルとして庶民にまで広く知れ渡り、悲劇のヒロインとして、ディアナ=アメティス侯爵令嬢は一躍時の人となった。  民衆は語る。 『ディアナ様は、全てを予知されていたらしい』 『神からの信託があったとか』 『彼女は神に愛されている。いや、あの見目麗しいお姿……彼女こそが女神様だ!』 『心優しいディアナ様は心痛のあまり、伏せっておられるらしい。お労しい!』  なんだか、とんでもないディアナ像が、まことしやかに囁かれている。  微妙に操作された情報も流れているから、成功ではあるのだけれど……  裁定から数日後、セドナと話をするために娼館へ向かうと、「あら、女神様。お帰りなさい」といつもの美女スマイルで迎撃された。さすが情報屋。すでに全てを知っていた。
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