最終章 終わりと始まり

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 ようやく全てのシナリオから解放されたわたくしは、やりたい事をやろうと決めた。 『ディアナ=アメティス侯爵令嬢ではなく、自由な立場で外国に留学し、念願の経営学を学びたい』  その申し出にお兄様は渋い顔をしたけれど、わたくしが誰かさんのせいで7年もの月日を棒に振ったことを憐れんでか、「……表向きは、ディーは地方で病気療養中ということにしよう。釣書もそろそろ鬱陶しくなってきた事だしね」と最終的には許してくれた。  婚約破棄以降、侯爵家には大量に婚約用の釣書が届いていたようだけれど、わたくしが一度も目を通すこともないまま、お兄様と執事長によって可燃ゴミと化していたようだ。  あんなに大々的なスキャンダルの中心人物だというのに、貴族たちは本当に抜け目がない。  やっと自由になったのだから、暫く婚約なんてするつもりはないし、侯爵令嬢が娼館を経営するなんて外聞が悪い。そんな声もある。  そうしてわたくしはありとあらゆるコネを駆使し、どこぞの子爵令嬢ディア=ヴォルターとして、教育水準が高いことで有名な大国エンブルクの国立学院に1年間だけ編入する事になった。
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