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本当は平民という設定が良かったけれど、そんな髪色と瞳の色の平民がいたら逆に怪しまれるという周囲の猛反発を受けて渋々受け入れた。
染めるのは嫌だし、1年間カツラもむれるものね。
◇◇◇
わたくしを乗せた馬車は、ユエール王国随一の港町ヴァプールに到着した。
新たに護衛騎士となった茶髪の青年に案内されるがままとあるカフェの一室に通され、休憩をとることになった。
ノックの音に、侍女のハンナが扉を開ける。
注文したものが届いたのだと思ってそちらを見ると、黒髪の青年が部屋に入ってくるところだった。
「あら、バート。落ち合うのは、もう少し後の予定ではなかった?」
エンブルクに行くにあたり、バートもちょうど国に帰る予定だということなので、お兄様が同行を依頼していたのは知っている。
ただわたくしは、船着き場で合流すると聞いていたのだけれど……
「こんにちは、ディアナ様。少々予定が変わったので、お邪魔してもよろしいでしょうか?」
見るからに穏やかで人好きのする優しい微笑みなのに、そこに断れない空気を感じるのは何故だろう。
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