交番勤務

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交番勤務

関根将は長年の夢だった。 警察学校を卒業して交番勤務になった。 だが、その交番の側には大きな廃墟の団地が取り壊されないまま残っていた。 団地の名前は「山林ニュータウン」だった。 「こんな山奥に勤務か~。」 将は思わず呟いた。 山の奥地なので交番は「山林交番」 一つしかなかった。 その交番には関根将と佐藤和明の二人が勤務していた。 どちらかがパトロールしてどちらかが交番に常に駐在していた。 佐藤和明は関根将に言った。 「関根巡査、あの噂知ってます?本当なんですかね?」 「さあな?テレビだから大袈裟に言ってるだけじゃないのかな?」 「そうだといいんですが。パトロール中には、何もなければいいんですが。」 二人はそんな会話をしていた。 「山林ニュータウン」別名廃墟団地は テレビでも有名な団地で悪い噂しか聞かなかった。 心霊スポットとしても有名で高校生が肝試              しにやって来て幽霊を見たとか。 この団地に迷いこんだ若者が行方不明になったとか 夜中にうめき声が聞こえるとか。 変な動物を見たとか。噂が絶える事はなかった。 そんな時、近くに住んでいるというお年寄りの方々 が交番にやって来た。 「あの廃墟団地からずっと毎日のようにうめき声が聞こえるんですよ。何とかしてください。」 「私も聞きましたよ。散歩中にうめき声が」 「あの廃墟団地を調べてください。前の交番の 人は、何かを見たようで逃げ出してしまったようなんです」 「それとも?行方不明になったのかも知れません」 佐藤は「関根巡査パトロールして調べてきます」 「大丈夫ですか?何かあったら大変ですから応援呼びましょう。」 「気をつけてください。今本部に電話しますから」 「大丈夫ですよ。パトロールしますから、皆さん安心してください。」 関根将は「本部に電話をかけた。」 「まだ事件でもないのに行かれないよ。 こっちは忙しいんだから。」 本部は冷たくそう言った。 お年寄りの人を宥めて関根将は自宅に戻るように説得した。 お年寄り達が自宅に帰った頃、佐藤和明はパトロールから帰ってきた。 「別に何もありませんでしたよ。変な人もいませんでしたよ。」 佐藤和明は確かにそう言った。 なのに、お年寄り達は毎日のように交番に来た。 その都度パトロールをしたが、別に何もなかった。 たが、お年寄りの方々は、皆変なうめき声が 聞こえると言う。 「ここまでは声が届かないって事か?」 二人とも毎日のように来るお年寄りが嘘をついているようには見えなかった。 「佐藤巡査私は明日、団地の側に行って寝袋に寝て 本当にうめき声が聞こえるか?調べてみようと 思うんです」 そう関根将は佐藤巡査に話した。 次の日の夕方から関根将は寝袋を持って団地の側にいた。 「寒い、山は冷えるな~」そんな事を思いながら寝袋と簡易カイロで体を温めながら待機していた。 すると「うおー。」と言う声が聞こえた。 関根将は急いで団地の中に入ってくまなく何かあるのではないか?とパトロールをしたが、何もなかった。それに一瞬のうめき声ですぐに声は消えた。 関根将は仕方なく交番に戻った。 「やはり何もなかった。でも、確かにうめき声が聞こえた。あれは一体何だったのだろうか?」 佐藤和明に事実を伝えた。 相変わらずお年寄りの方々は毎日のように うめき声の事を言いに来る。 関根将と佐藤和明は何もなかったと言うしかなかつた。 そんな時だった。一本の電話が交番にかかってきた。 関根将は電話を急いでとった。 「はい、山林交番ですが。」 若い女性らしい人が震えた声で話し始めた。 「死体を~。死体を~見たんです。 廃墟団地の入口で。」 関根将は、女性に詳しく聞くため 「そこに待機していてください。山林団地の入口で見たんですね 今本部に連絡します。私もすぐ行きますから。」 関根将は、 「落ち着いてください。今行きますから安心してください。」そう言うと団地に向かった。 ところが女性が見たと言う場所には死体がなかった どこを探しても死体らしきものは見つからなかった。 「これは?どう言うことですか?本当に見たんですか?」山下順子と名乗る女子大生は「確かに見た」と話していた。 死体の側を離れたのはたったの10分くらいで、 夜で人通りも少ない場所だった。 「髪の長い女性がうつ伏せになって亡くなっていたと言う事だった」 「何故?死体がないのか?」 関根将と佐藤和明は この事件から難事件に巻き込まれていくことになる。 関根将と佐藤和明は本部の刑事と一緒に交代で 死体を探したが、見つかる事はなかった。 関根将も佐藤和明も夜中の見回りの時に聞こえる 声が気になっていた。 「あのうめき声はなんだったのだろう?」 「女性の死体は?いったいどこに?」 何日探しても死体が見つかる事はなかった。 そして半年がたった今日また一本の電話が入った。 「はい、山林交番ですが、えっ?団地に肝試しに 行ったきり帰って来ない?」 関根将は団地に急いだ。お母さんと一緒に探したが 見つからなかった。 だが、確かに息子さんが来た証拠が見つかった。 お母さんの話は落ちていた「懐中電灯」に名前が書いてあった。「谷口海」息子さんの名前だった。 「谷口海」君もまた行方不明になってしまった。 団地をくまなく探しても、たくさんの行方不明者 も女の人の死体も見つからなかった。 警察本部は死体も行方不明者もみつからない事に 苛立ちを覚えていた。
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