空と森とスニーカー

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 今年は夏生とも同じクラスになった。  去年は別のクラスで、帰りによく教室へ夏生を迎えに行っていた。  皐月が顔を出すと、夏生のクラスメイトは奥さんか来たぞ、などと言って茶化す。適当に流せばいいのだが、生真面目な夏生はあまりいい表情をしなかった。自分が奥さんなのかは疑問だが、今年はそんな夏生の不機嫌さを回避できるようになったのはありがたい。 「どこで聞いたの、そんな話」  噂話に疎い皐月は岡田に聞いた。 「そんなのみんな知ってるよ。なあ、藤田」 「うーん、まあ……そうかな」  夏生は皐月を横目で見て、曖昧な返事をした。 「こいつちょっと前から急に背ぇ伸びだしたから」  聞いていないと思っていた木村が口を挟んだ。 「それ関係ある? てか、みんな知ってて、なんで俺だけ知らないんだよ」 「いま知ったでしょ」  岡田が言った。 「そういうこと?」 「いいじゃん上野、とりあえず付き合っちゃえば」  一年の時から彼女持ちの岡田は余裕を見せているのか、にやにやしながら言った。 「そうかなあ」  雑誌から目も上げず木村はそうそう、とうなずいた。  女子の誰かが自分を好きだと言っている、という状況には浮かれたが、付き合うこと自体が、皐月にはよくわからない。想像はしてみるが、いまいちピンとこなかった。本当ならそれもありだろうか。噂は噂かもしれない。  机の上に両腕を投げ出し伸びをしていると、夏生は頬杖をついたまま、ふと窓の外に顔を向けた。皐月は夏生の形のよい後頭部と耳の付け根を見た。
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