空想未来少年リターンズ

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 とにかく調べる時間を稼ぐ。  となると、僕の返事はこれしかない。 「ほう……お前もそんなことに興味を持つ年になったか。後でゆっくり語ってあげるから、取り敢えず風呂にでも入っておいで」  ばっちり決まった。  文句が言えるものなら言ってみろ。 「はぁい……」  息子は大人しく浴室へ向かっていった。聞き分けが良いことが、この子の最大の長所なのかもしれない。  僕は急いでスマートフォンを開く。 『インフェクションスプレッド……感染拡大のこと』  ……危ない単語だった。  どうしよう。  語ってやる、とか言ってしまった。  どう考えても10歳の子供と語る内容ではない。  と言うより、感染拡大に関して何を語れというのだろうか。『感染拡大って危険だよね』とでも言うのか? いや、浅すぎるにも程がある。その浅さを(さかな)に僕は見下されるに決まっている。  いや、しかし、そもそも何故あの子はこんな単語に興味があるんだ? 危ない奴なのか? 何らかの感染拡大を画策しているのか?  どうしよう。今まで僕は平和に生きてきたので、危ない奴との接し方がよくわからない。まさか自分の息子が危ない奴だとは思ってもみなかったので、正直困る。天才で危ない奴だとか、本意気で危険な奴じゃないか。どうしよう、我が子がマッドサイエンティストの卵だった時の対処法なんて、スマートフォンも教えてくれないぞ。  あと、感染拡大に興味がある10歳児とどうやって団欒(だんらん)すればいいんだろう。すごく困るし、すごく辛い。世の中に対して、すごく申し訳ない。  暫く悩んでいると、息子が風呂から出てきた。  僕は恐れおののく。 「……あのさ、お父さん」  もう、やめてくれ。
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