春の嵐

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 その顔立ちはまるで少年のようにやんちゃだが、よく見なくともなかなかのそれは美形……。 「どうしたの? クラブ、まだ決めてない?」  彼は更に真璃亜に畳み掛ける。 「あ、あのう……。オケ部に入ろうと……」  ようやく真璃亜がその言葉を発すると、 「ああ。日向ハーレム、ね」  と、彼は心得ているとばかりに呟いた。 「ひゅ、日向、ハーレム……!?!」  彼のその一言に、真璃亜は心底ビックリして声を上ずらせた。 「そう、東応大学オーケストラ部、その名も別称「日向ハーレム」。文科Ⅱ類・経済学部経営学科三年の日向遙希がしきってるサークル、てことさ。君、オケ部に入るなら特に気をつけた方がいいよ。何せ東応(うち)の可愛い女の子は皆、くわれちゃってるって専らの噂だから」  彼がカメラをいじりながら、なお真璃亜を激写しようとしていたその時 「それは聞き捨てならないね」  背後から、よく通るテノールの声がした。 「げっ! 日向! どこから沸いて出た?!」 「日向先輩!!」  日向のそのあまりのタイミングの良い登場に、真璃亜もその男子学生も、心臓が止まるかと思うほど驚いた。
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