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「沸いて出たはないだろう? 火浦。それに、可愛い女子学生は片端から被写体にしている無節操な君に、そんな根拠のない噂を言われる筋合いはないと思うな」
顔こそ笑っているがしかし、日向は本気で機嫌が悪い。
真璃亜には、わかる。
伊達にこの三年間つきあってきたわけじゃない。
「あ、あのう……日向先輩。こちらは?」
助けを求めるような真璃亜の言葉に、二人の視線が一気に真璃亜へと向けられた。
「自己紹介したらどうだい、火浦」
「ああ、そうだな。俺は、火浦将。文科Ⅰ類・法学部法学科三年で専攻は民法。クラブは見ての通り写真部だけど、日向とは入学した頃からの腐れ縁だよ」
「腐れ縁、ね。」
まだ日向はポーカーフェイスのまま、その不機嫌さをその薄い笑みの下に隠している。
「あ、あの……。文科Ⅲ類・外国語学部志望で、松朋音楽学院高等部時代から日向先輩の後輩の、小野真璃亜です」
小さな声で真璃亜もそう自己紹介すると、火浦に向かって行儀良く一礼した。
新入生の真璃亜は教養学部に属する。
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