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皮肉な日向の態度にも火浦はめげる様子がない。
「じゃあ、火浦。もう僕たちは行くよ」
おいで、真璃亜……と、日向は真璃亜を促した。
「真璃亜ちゃん! さっきの話、本気で考えててよ。俺、真剣(マジ)だから!」
火浦の言葉を背に受けながら、日向と真璃亜の二人はその場を離れていた。
最初は呆気にとられていた真璃亜だったが、不意に可笑しくなってきてクスリと笑った。
「何が可笑しいんだ、真璃亜」
「だって。わかっちゃいました。あの方が遙希先輩のお話にもよく出てくるご親友の、あの火浦さんなんだって。先輩のご親友だけあって、見かけより良い方みたいですね」
「親友? は! そんな呼び方もあるんだな」
吐き捨てるように日向は言った。
日向の機嫌はすぐには直りそうにない。
それで、真璃亜は軽い溜息を吐く。
こうなると「触らぬ日向に祟り無し」。
それも、この三年間で真璃亜が体得した日向に関する極意である。
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