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しかし、日向にしてみれば、真璃亜が同じ大学に入学したのは嬉しいが、ほとんど男ばかりのキャンパスで、真璃亜がどれだけの野郎共の視線に晒されるのかと思うだけで燃え滾るような嫉妬に狂いそうなのだ。
そして、教養課程の一・二年生と、専門課程の三・四年生とはキャンパスが違う。同じ大学と言っても、顔を合わせられる機会は自ずと限られてくるだろう。
まして真璃亜は真面目に講義を受けるだろうし、ピアノのレッスンも今まで以上に欠かせない。
日向にしてみても、日向の家の事業に加え、三年になって課される大学のゼミの課題など、忙しさはこれまで以上に比ぶべくもないのだ。
何を苛ついているんだ、俺は……?!
しかし。
日向はふと我に返った。
ほんの一歩ほど遅れて、真璃亜が黙って自分の後をついてくる。心なしか哀しそうな瞳をして……。
そうだ。今日は真璃亜の「東応大学・入学式」という、人生にも滅多にない晴れの日ではないか。
「悪かった。真璃亜」
歩を止めると、日向は呟いた。
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